ガルドラ龍神伝―闇龍編―
ナンシーは、リタが初めて礼を言ったことに照れていた。
「い、嫌だなぁ、リタ。急に改まってどうしたの? いつものあなたらしくないわよ。そ、そんな……クロワッサンくらいで……」
「そうかな? でも、ちゃんとお礼は言わないとね。諺にもあるじゃないか。≪親しき中にも礼儀あり≫、てね」
「それはそうだけど……」
リタとナンシーが楽しそうに会話している所へ、ヨゼフが入ってきた。
「リタ。あんたは最近、よく魘されてるけど……。何か、怖い夢でも見てるの?」
「うん。九年前のことだけど……」
リタは自分が五歳の時に起きた事件の内容、魔道族によって無理矢理この領国に連れて来られたこと、自分が砂龍族の王女だということを、ヨゼフ達に明かした。
ヨゼフ達は胡坐をかいて腕を組み、ふむふむと頷いている。
「なるほど。つまりキアはあんた達砂龍族や僕達水龍族、そしてナンシー達火龍族への見せしめにするために、この国であんたを奴隷にしたって訳だな?」
「うーん……。ほとんど正解だけど、君達の一族だけに限らず、この魔界全ての龍魔族を根絶やしにするための下準備だと、あいつは言ってる」
「何ですって?」
「キア、腐り切ってる」
リタの大それた発言に、奴隷全員が驚きの声をあげた。
と同時に、奴隷部屋の屋外から、氷系魔道師メアリーと下級魔道師達の声が響くように聞こえた。
「どうやら、≪闇の大蜘蛛バウト≫が始まるみたいだね。それも、氷系魔道師メアリー主催の」
リタは、怯えながら言った。
案内役の少年が彼女達の所に来て、新しいバウトのルールを説明する。
「えー……。またバウトのルールが新しくなる。今までは一対一だったが、今回から三対一で戦うことになる。ついでに、今回のバウトのメンバーも発表する。砂龍族のリタ、水龍族のヨゼフ、火龍族のナンシー。今指名された魔族は、闘技場まで来い」
魔道族の少年は、命令口調でリタ達に言った。
彼女達も現時点では、この少年に従うしかない。
(ちぇ。何だよこいつ、偉そうに。いくら身分が少し上で、僕達よりも年上だからって威張ってる。それと、もう一つ気に食わないのは、キア自身が気紛れなことだ。毎回毎回、あいつがバウトのルールをころころと変えるから、混乱するよ)
ヨゼフは、何も言い返せずに苛々していた。
「い、嫌だなぁ、リタ。急に改まってどうしたの? いつものあなたらしくないわよ。そ、そんな……クロワッサンくらいで……」
「そうかな? でも、ちゃんとお礼は言わないとね。諺にもあるじゃないか。≪親しき中にも礼儀あり≫、てね」
「それはそうだけど……」
リタとナンシーが楽しそうに会話している所へ、ヨゼフが入ってきた。
「リタ。あんたは最近、よく魘されてるけど……。何か、怖い夢でも見てるの?」
「うん。九年前のことだけど……」
リタは自分が五歳の時に起きた事件の内容、魔道族によって無理矢理この領国に連れて来られたこと、自分が砂龍族の王女だということを、ヨゼフ達に明かした。
ヨゼフ達は胡坐をかいて腕を組み、ふむふむと頷いている。
「なるほど。つまりキアはあんた達砂龍族や僕達水龍族、そしてナンシー達火龍族への見せしめにするために、この国であんたを奴隷にしたって訳だな?」
「うーん……。ほとんど正解だけど、君達の一族だけに限らず、この魔界全ての龍魔族を根絶やしにするための下準備だと、あいつは言ってる」
「何ですって?」
「キア、腐り切ってる」
リタの大それた発言に、奴隷全員が驚きの声をあげた。
と同時に、奴隷部屋の屋外から、氷系魔道師メアリーと下級魔道師達の声が響くように聞こえた。
「どうやら、≪闇の大蜘蛛バウト≫が始まるみたいだね。それも、氷系魔道師メアリー主催の」
リタは、怯えながら言った。
案内役の少年が彼女達の所に来て、新しいバウトのルールを説明する。
「えー……。またバウトのルールが新しくなる。今までは一対一だったが、今回から三対一で戦うことになる。ついでに、今回のバウトのメンバーも発表する。砂龍族のリタ、水龍族のヨゼフ、火龍族のナンシー。今指名された魔族は、闘技場まで来い」
魔道族の少年は、命令口調でリタ達に言った。
彼女達も現時点では、この少年に従うしかない。
(ちぇ。何だよこいつ、偉そうに。いくら身分が少し上で、僕達よりも年上だからって威張ってる。それと、もう一つ気に食わないのは、キア自身が気紛れなことだ。毎回毎回、あいつがバウトのルールをころころと変えるから、混乱するよ)
ヨゼフは、何も言い返せずに苛々していた。