ガルドラ龍神伝―闇龍編―
2
スクルド火山のふもとの町に降っている火山灰が、太陽の光を遮る。
その火山灰は、町の北東にある墓地までも、薄白く染めている。
ナンシーは、喪服ではなく奴隷服のまま、両親の墓石へと向かう。
それは、入り口から五メートル行った所で見つかった。
ナンシーは遺骨を埋め、墓守の所に行く。
「こんにちは、ラグスさん。音楽家のレチェスの娘、ナンシーです。今日は両親の遺骨を埋めて、ついでにお墓を掃除しようかと。できれば、手伝って頂けませんか?」
彼女の言葉に反応して、≪ラグス≫という名前の墓守が、箒を持って小屋から出る。
「一応確認するけど、君は本当にナンシーかい? 九年前と比べて、随分と顔が違うような……」
墓守は緑色の縁の眼鏡を動かし、ナンシーの顔を見ている。
彼女は、なぜ自分が九年前と違う姿をしているのかということを、墓守に説明する。
墓守は、納得しているようだ。
「なるほど。キアの魔力は、日に日に力を増してる、ということだね?」
「はい。でも、時々私は思うのです。あの領主が放つ闇の魔力は、彼自身のものではないのでは、と」
「と言うと?」
「これは推測ですが、千五百年前の伝説が大きく関係してると思います」
「なるほど。ところで、墓掃除を早く済ませないと。君の友達が、待ってるんじゃないの?」
墓守の言葉で、ナンシーははっとした。
彼女は慌てて、墓石の周りを、箒で掃く。
綺麗になって、二人はほっとした。
「ナンシー、君の両親は私が拝むから。君は友達と一緒に、旅を続けなさい」
「すみません。今回は忙しくて。命日には戻れると思います」
そう言ってナンシーは墓守に頭を下げ、大急ぎで家に向かう。
(待っててね、リタ、ヨゼフ。今、旅支度をするから)――
一方、リタとヨゼフは、火龍族族長の家でゼネラ族長の話を聴いていた。
話の内容は、近頃の神殿の様子についてだった。
族長の話によれば、ナンシーが奴隷になった年から神殿内に不審者が侵入し始め、火龍族の人々を苦しめているという。
スクルド火山のふもとの町に降っている火山灰が、太陽の光を遮る。
その火山灰は、町の北東にある墓地までも、薄白く染めている。
ナンシーは、喪服ではなく奴隷服のまま、両親の墓石へと向かう。
それは、入り口から五メートル行った所で見つかった。
ナンシーは遺骨を埋め、墓守の所に行く。
「こんにちは、ラグスさん。音楽家のレチェスの娘、ナンシーです。今日は両親の遺骨を埋めて、ついでにお墓を掃除しようかと。できれば、手伝って頂けませんか?」
彼女の言葉に反応して、≪ラグス≫という名前の墓守が、箒を持って小屋から出る。
「一応確認するけど、君は本当にナンシーかい? 九年前と比べて、随分と顔が違うような……」
墓守は緑色の縁の眼鏡を動かし、ナンシーの顔を見ている。
彼女は、なぜ自分が九年前と違う姿をしているのかということを、墓守に説明する。
墓守は、納得しているようだ。
「なるほど。キアの魔力は、日に日に力を増してる、ということだね?」
「はい。でも、時々私は思うのです。あの領主が放つ闇の魔力は、彼自身のものではないのでは、と」
「と言うと?」
「これは推測ですが、千五百年前の伝説が大きく関係してると思います」
「なるほど。ところで、墓掃除を早く済ませないと。君の友達が、待ってるんじゃないの?」
墓守の言葉で、ナンシーははっとした。
彼女は慌てて、墓石の周りを、箒で掃く。
綺麗になって、二人はほっとした。
「ナンシー、君の両親は私が拝むから。君は友達と一緒に、旅を続けなさい」
「すみません。今回は忙しくて。命日には戻れると思います」
そう言ってナンシーは墓守に頭を下げ、大急ぎで家に向かう。
(待っててね、リタ、ヨゼフ。今、旅支度をするから)――
一方、リタとヨゼフは、火龍族族長の家でゼネラ族長の話を聴いていた。
話の内容は、近頃の神殿の様子についてだった。
族長の話によれば、ナンシーが奴隷になった年から神殿内に不審者が侵入し始め、火龍族の人々を苦しめているという。