ガルドラ龍神伝―闇龍編―
その村は樹海の奥にあるだけあって、葉龍族の魔族のみが暮らしている。


出入り口から四メートル歩いた時、四人か五人くらいの家族が住んでいるような規模の家を見つけた。


「これが、あんたの家なのか、ヒア?」


「そうだよ。大きい家だけど、今は俺と妹のプレシオしか住んでない。最も、帰ってきたのは極最近だけど」


そう言ってヒアは、三人を中に入れる。


その時彼は、妹の足音がしないことに疑問を感じた。


(おかしいな。


プレシオは、俺に何も言わずに出かけたのか?


あいつは、勝手にどこかに行く奴じゃなかったのに)


ヒアは首を傾げ、三人に牛乳とお菓子を出す。


が、リタは急に牛乳をヒアの目の前まで持って行った。


「どうしたんだ、リタ? とても牛乳嫌いには、見えないけど」


「いや、好き嫌いの問題じゃないよ。


実は私、冷たい物はお腹にこたえるタイプなのさ。ごめんね、ヒア」


「いやいや、大丈夫。そういうことは極力早めに言ってくれる方が、俺も助かるし」


四人の元奴隷戦士がお菓子を食べ始めた頃、唐突にナンシーが質問する。


「ヒア、あなたはどうやって、奴隷部屋から抜け出したの?


闘技場の近くの抜け道や弓使いの訓練場にある吹き抜け付近は、警備が厳しかったはずよ」


「変装したのさ」


「変装? でも、領国にはあんたと同じ背丈の魔道師は、いなかったじゃないか」


ヨゼフは、さりげなくきついことを言った。


ヒアは一回唾を飲んでから、また話を続ける。


「ま、まあ、確かに君の言う通り、俺くらいの背丈の奴はいなかった。


だけどあの時、俺は両親の形見だった≪耐火属性マント≫を破って、緑色に塗ることを思いついた。


ほら、葉系魔道師は、男女問わず半袖のマントを羽織ってるだろう?


葉属性の≪葉龍族≫である俺なら、あいつらに紛れ込めるかもしれないと思ってな。


君達が闘技場に連れて行かれた日、あの氷系魔道師の後ろについて、大蜘蛛が来るのを待った。


そして、君達が大蜘蛛を倒した後、俺も騒ぎに紛れて裏口から抜け出した、という訳さ」
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