双子ですけどなにか?【修正終わりました】


家に帰ると、ただいまも言わずに部屋に入った。

蹴られた制服のスカートについた砂を払っていたら、悔しさが込み上げてきた。

何で私がこんな仕打ちを受けなきゃならないんだろう。

ヒナがいてくれなかったら、と思うと体が震える。

いざというときに怯んでしまう自分の弱さが、嫌いだ。


「健先輩……」


助けを求めるように携帯を見るが、一件のメールも来ていない。

修学旅行中だから、当たり前だけど。

なんだか自分がこの世界にひとりぼっちのような気分になってしまった。

晴人はバイトで、まだ帰ってきていない。


「……電話はダメだよね……」


健先輩の声が聞きたい。

だけど……さすがに今夜は迷惑だろう。


「ふぅ……」


当たり障りの無いメールなら良いかな。

返ってこなくても、落ち込まないようにしよう。

そう思って、メールを打ちかけた時だった。

バイブにしていた携帯が、手の中で突然震えた。

待受画面には、『健先輩』の文字。

私は慌てて通話ボタンを押す。


「はい!」


『あ、もしもし。彩花?』


健先輩だ……。

いつもの優しい声。

何故か指が震える。

なんていうタイミング……。


「どうしたんですか?旅行は?」

『うん、今皆枕投げしてる。本気になるといけないから中座したんだ』

「あはは、健先輩が本気出したら、皆怖がっちゃいますもんね」

『そうなんだよ。ダメだね、ああいう闘争本能くすぐられるものは』


はは、と笑う健先輩の声に、安心する。

しかしその声は、すぐに曇ってしまった。


『……彩花、元気ないの?』

「えっ?」

『……なんかそんな気がするんだけど』


じわ、と涙が溢れてきてしまった。

普通の会話をしただけで、何で見通されてしまうんだろう。


「大丈夫です。何もありません」


何となく嘘をついてしまった。


『……そう?それならいいけど……』


バタン、ドスン。

電話の向こうから、枕投げらしき音が聞こえてきて、笑えてしまう。

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