双子ですけどなにか?【修正終わりました】
「アホか。これだって、彩花の使いだ」
彩花の名前を出した途端、三井の顔が、少しかげった。
そうだ。
あまりに馴れ馴れしくて忘れていたが、こいつが彩花いじめの元凶だった。
話しかけようと思ったら、駐車場に客の車が停まった。
「……話あるならさ、ちょっと待っててよ。もうすぐ交代だから」
無意識ににらんでしまったのかもしれない。
三井は苦笑して、「ありがとうございました」と一礼した。
駐車場で少し待っていると、三井が私服でやってきた。
チャラ男らしく、俺は全く取り入れようと思わない、蛍光ピンクがアクセントのパーカーを着ていた。
とっくに10月になった夜は、肌寒い。
少し風が吹いて、三井の茶髪をふわりと浮かべた。
「お待たせ。うわアニキ、バイクじゃん。かっけぇな」
「でも中古。親父のお下がりだ」
「マジで?いいじゃん、かっけぇよ」
三井は俺のバイクに食いつき、かっけぇ、ヤバイ、と繰り返す。
まるで子供のようだ。
「バイクは良いんだよ。話が先だ」
「あ、そうだった……彩花ちゃんの事だろ」
三井は相変わらずのんびりした口調で喋る。
しかしその顔は、もう浮かれていなかった。
「何か……いじめられたんだよな。俺のせいで……」
「……そうみたいだ。何とかならないか」
慰めは無用だ。そんな事に意味はない。
簡潔に言うと、三井はため息をついた。
「俺、できる対処はしたよ」
「……どういう事だ?」
「俺は身を引いたんだ、もう何とも思ってない。知り合いの女の子達にはそう、言ったよ」
「……マジか」
三井はこくりとうなずいた。
正直驚いた。
まさか、頼みもしないのに、そんな事を言っていたなんて。
「責任感じてんだ、俺だって……。彩花ちゃんをひどい目にあわせちゃってさ」
「……そうか……」
素直な視線。
こいつは嘘をつけないやつだ。
何故か俺はそう感じた。
「……だけど、女の子の嫉妬って本当に怖い。事態は、もう俺なんか関係ないところに行っちゃってる」