双子ですけどなにか?【修正終わりました】
勉強を教えてくれた時は、メガネの向こうの睫毛ばかり見てた。
プールの時は、本当はずっとそばに居たかった。
ドレスを選んでくれた、優しい眼差し。
意地悪なキス未遂。
私を助けるために、封印していた俺様バージョンになって。
本当は少し怖かったけど、嬉しかった。
入学式から、私に気づいてくれていて。
優しい声で、想いをささやいてくれた。
自転車の二人乗り。
悲しい時は、黙って髪を撫でてくれた。
死ぬほどドキドキした、大人のキス。
健先輩と過ごした時間が、ぐるぐる体を駆け巡る。
あぁ。
こんなに、残ってるのに。
いつになれば、忘れられるというのだろう。
「……っ……」
冷たい海風に吹き飛ばされないように、晴人の腕にしがみつく。
すると晴人は、私を守るように、もう片方の手を背中に回してくれた。
晴人の鼓動がくっついた耳から届いて、そこからだんだん温かくなっていった。
「晴人は……ちゃんと、お別れ、したの……?」
そう聞くと、晴人の胸が、ドクンと鳴ったのがわかった。
「……俺、やっちまったんだ」
「えっ?」
「決定的に嫌われるような事を、自分でした」
その言葉に驚いて、顔を上げた。
晴人の眉間には、深いシワがあった。
低い声が、懺悔をするように私に届く。
「……無理矢理押し倒した」
「えっ、ええっ!」
「はは、ホント、バカだよな……」
口だけ、笑った形になった。
だけど滅多に笑わない晴人は、うまく作り笑いができてない。
「メガネとの写真の事で、頭に血が昇って……。しかもあいつがスイッチ入れるもんだからさ」
「…………」
「……本当は、どこかで期待してたんだ……。メガネより俺の事が好きなら、受け入れてくれるんじゃないかって。俺のものになってくれたら、ヘアピンの事も写真の事も、全部、なかった事にしようと思って……」
晴人の声は、下手くそなベースのように、不安定に震える。
「……でも、できなかった……」
ぽたん。
晴人の目から落ちた、一粒の雫が、私の頬を濡らした。