双子ですけどなにか?【修正終わりました】


屋上に他に人はいなかった。

ただ一人、長い髪を束ねた美奈子が、俺を待っていた。

冷たい風が、彼女のスカートの裾を揺らす。


「話って、なんだ」


早速用件を切り出すと、美奈子は沈んだ顔をした。


「あの……私、信用ないと思うんだけど、素直に聞いてくれるかな」

「だから何なんだよ」

「あのビラの事だけど」

「何か知ってるのか?」


静かに美奈子がうなずいた。

まさか、自分がやりましたって言うんじゃないだろうな。

そんな俺の考えを見抜いたように、美奈子が話だした。


「……私じゃないよ。彩花ちゃんも里美先輩も嫌いだったけど、あんな事するまで憎んでない」


嫌いだった。

美奈子はきっぱりと言った。

それが逆に彼女の言葉に信頼性を持たせる。


「私……見たの」

「何を……」

「あのビラを作っていた人を」

「なんだって!?」


意外な言葉に耳を疑う。

胸がザワザワと音を立てるように騒いだ。


「……誰だ」

「…………」



美奈子が言った名前は、強い風にかき消されそうになる。

しかし俺の耳には、しっかりと届いた。



「……マジかよ……」

「うん。コンビニで偶然見かけたの。コピー機をずっと占領してる人がいるなと思ったら、あの人だった」

「まさか……」

「声をかけたの。そうしたら、自分の家のプリンターが壊れたんだって言ってた。で、急いでその紙の束を袋に入れて、行っちゃった」


美奈子は相変わらず、強い視線を持っていた。

気の強い、正直な眼差し。


「それって……本当にあのビラだったのか」

「うん……これ……」


美奈子はポケットから何かを取り出した。

それはノリもテープもついた形跡のない、あのビラだった。


「急いで原稿を忘れたみたいだったから、今度会った時に渡してあげようと思って、コピー機を開いたの。そしたら、これが……」


ごくり、と唾を飲んだ。

まさか。

まさか、あいつが……。


「そのコンビニってどこのコンビニだ?」

「国道脇の、漫画喫茶の近く」

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