双子ですけどなにか?【修正終わりました】


「理由は簡単。小学校の時、両親が離婚して、全員離ればなれになったからだ」

「……!」


言葉を失った私に、健先輩はまた苦笑を返す。


「お母さんの話、聞いた事ないかい?キミたちが赤ちゃんだった頃の話」

「あります。すごく、大変だったって……」

「じゃあ、わかってもらえると思うんだけど。三つ子ってさ、大体早産で小さく産まれるんだよね。僕たちも例外なく、小さく産まれてNICUに入院して。その時から母親の苦労は、半端なものじゃなかった」

「…………」

「毎日母乳を搾って、病院に届けて。やっと退院したと思ったら、それぞれ違うタイミングで、ミルク、オムツ、ねんね。赤ちゃんってしばらくは、夜中もミルクを飲むために起きるんだ。一人飲ませてやっと寝かせたら、もう一人が起きて……。僕は男だけど、想像したらゾッとするよ」


健先輩は、遠い目をした。


「そんな調子で離乳食が始まって、何度も検診に行って、いくつも予防注射をさせて。やがて歩きだして、しゃべりだして……。そりゃあ大変だったと思うよ。僕はのんびり座ってる母親を見た記憶がない。

だけど父親は、そんな母親の育児を手伝おうとはしなかったみたいだ。仕事で疲れてたから、という言い訳を今でもしてるけどね。

僕たちが小学校に行きだして、母親は働きだした。そこで弾けちゃったんだ。育児と旦那の世話だけで、自分の人生終わってたまるかって。

突然、里美だけを連れて出ていったのは、小5の時。それからすぐに、離婚が成立した」


何と返していいかわからない。

確かに双子、三つ子の世話は一人の赤ちゃんの育児より何倍も大変だというけど。

それは大変でしたね、なんて、絶対言えない。

健先輩のお母さんが、どれだけ大変だったか。

離ればなれになった、三つ子の気持ちも。

私には、想像もつかないから。


「まぁ、三人とも似てないからね。素直に信じろって言うほうが、無理かもしれないけど」


呆然としている私に、健先輩が眉を下げたまま言った。

< 389 / 429 >

この作品をシェア

pagetop