双子ですけどなにか?【修正終わりました】
「あれ?」
「来るんだよな?僕の家に」
「あ、あわわ……」
健先輩はあっと言う間にタクシーを拾って、私を乗せてしまった。
そして運転手に告げたのは、間違いなく健先輩の家の住所だった。
「い、良いんですか、いきなり……」
「彩花が良いなら、僕は歓迎するよ」
口の片端だけを上げた、意地悪な笑いかた。
それを直視できなくて、温かいタクシーの中、窓にぶつかって溶ける雪をずっと見ていた。
やがてタクシーは健先輩の家の前に停まった。
健先輩と、三井先輩と、里美先輩が育った家に。
ずっと離される事のない温かな手の平に引かれ、一度だけ来た健先輩の部屋に、再び足を踏み入れた。
まさか、いきなりこんな展開になるなんて……。
震える指でお母さんにメールすると、電話をかけて来られないように、電源を切った。
晴人の事は少し気がかりだけど。
きっと何か大変な事が起きたら、わかるよね。
あの時みたいに。
温かくなった部屋で、まだちらちら落ちてくる雪をぼんやり見ていると。
「コーヒーで良かったかな」
「ははは、はいっ!」
飲み物を運んできた健先輩に、驚いてしまった。
しかも、スーツ姿のままで。
スーツを着た健先輩は、いつもより大人っぽくて……。
バカみたいだけど、私にとっては王子様みたいに、見えた。
暖房で暖まった部屋でコーヒーを一口飲むと、その王子様は上着を脱ぎ、シャツとネクタイだけになった。
自分も少し熱くなってきて、コートを脱ぎ、ストールを羽織った。
「理事長ホール、すごかっただろ」
「はい!お城の舞踏会みたいでした」
思い出すとうっとりしてしまう。
シャンデリアなんて、初めて見たかも。
まるで自分がお姫様になったかのような錯覚に陥った女子は、私だけじゃないだろう。
「ごめんね、夢から覚ますような普通の民家で」
健先輩がカップを置きながら眉を下げた。
「そんな、うちだって普通の民家です」