双子ですけどなにか?【修正終わりました】
晴人が突然健先輩を連れてきた日、部屋は常に片付けておかねばならぬ事だと思い知った。
「そう言えば、パジャマ姿、可愛かったね」
「だあぁ、忘れてください、あれは!」
からかうような目で、健先輩は笑う。
「確かに、あの時と今日じゃ別人だもんな」
そりゃ、シワだらけのパジャマにボサボサ頭のあの時より、今日はマシだろう。
というか、今日はかなり気合いを入れてメイクをした。
「あ……」
「ん?」
「メイク落としがない……」
しまった。
突然のお泊まりに対応できるような準備を、何一つしていない。
「あぁ……大変だな、女の子って。里美の物で良ければ使う?」
「え、良いんですか?」
「本人が自由に使ってって言ってたから」
って……。
里美先輩、何気に爆弾発言なんですけど。
いつでも泊まってって言ってるようなもんですよ……。
「……でも、もったいないな。せっかく綺麗なのに」
ドクン。
心臓が高鳴る。
何でそういう事をさらっと普通に言えるんだろう……。
「皆がいたから言わなかったけど、本当に綺麗だね」
鼓動を落ち着けようとしてるのに、そんな追い打ちをかけられて、クラクラしてしまう。
「先輩も素敵です」
「そう?」
「はい」
「それはどうも」
健先輩は、にこりと笑った。
お得意の、麻薬のような甘い笑顔で。
「……中学の時女たらしだったって、本当みたいですね……」
「何それ。翔が言ったの?」
「はい。三井先輩、嘘ツカナーイ」
「あいつ……」
健先輩は苦々しい顔をした。
三井先輩の話をする時だけ、健先輩は子供のような顔になる。
私は密かに、それが可愛くて好きだった。
「自分から誘った事は無いよ。……来るものは拒まなかったけど。本当に好きになったのは、多分彩花が初めてだ」
「……え」
「嘘じゃないよ」
次々発せられる甘い言葉に毒されて、うっとりしてしまう。
本当に好き……。
頭の中で何度も何度も何度も繰り返す。
そのたびに、胸が熱くなっていった。