双子ですけどなにか?【修正終わりました】
こいつ、よく今まで無事に生き延びたな……。
頭は良いのに、どっか抜けてるんだよな。
叱られたはずなのに、ニヤニヤ笑ってるし。
「……なんだよ」
「『二人の問題』って、何か良いね。すごい、恋人っぽいね」
「何だそりゃ。よくわかんねぇ」
「いいの、わかんなくて」
里美はにへっと間抜けに笑うと、身体を離した。
「スーツ……かっこいいね」
頬を染めて、そう言う。
やっぱり、危機感がない。
照れ隠しに、何とか言葉を探す。
「あ?あぁ……昨日のままだもんな。これ、三井チョイスで、靴なんか親父の……」
親父の。
俺に似た、顔面凶器の親父の。
「……ヤベェ!」
「えっ!?」
「無断外泊だ!」
立ち上がってポケットから出したスマホを見ると、ズラリと自宅からの着信履歴が並んでいる。
さぁっ、と背中を冷たいものが走った。
父親はとにかく厳しい人で、曲がった事が大嫌いだ。
中学の時は問題を起こすたび、ボコボコにされた。
「親父に殺される……」
「ど、どうしよう……」
「……里美、今からうちに来て、事情を一緒に説明してくれ。お前がいれば親父も無茶はしないはずだ」
「う、うん、わかった」
「ついでに紹介するから。ちゃんとつきあってるって」
そう言うと、コートを出していた里美は動きを止めて、目を丸くした。
「……ほんと?」
「何だよ、嫌なのか」
「ううん、何か……嬉しい」
そう言うと、両手でコートをもんで、ニコニコしだした。
「変なやつ」
「だって、だって。ご両親に紹介してもらえるなんて、ますます恋人っぽいじゃない?」
「……っぽい、じゃねぇだろ」
はしゃぐ里美の身体を、また抱きしめた。
「恋人ぽい、じゃなくて、恋人だろ?」
耳元で言ってやると、里美はふふ、と小さく笑った。
「うん……」
「これから、っぽく、じゃなくて、らしく、ならなきゃな」
「……はい」
「……よし」
今までで一番幸せそうな顔をした彼女に、触れるだけのキスをして、一緒に家のドアを開けた。