双子ですけどなにか?【修正終わりました】
無理矢理視線をそらして走ろうかと思ったとき、先輩は意外にも、俺の方に近づいてきた。
心臓が急に、激しく脈を打ちはじめる。
俺は、金縛りにあったように動けなくなった。
「武内くん!」
……マジかよ。
本当に、近寄ってきた。しかも小走りで。
「……こんちわ」
「こんにちわ!」
仕方なく挨拶をすると、むこうは笑顔で返してくれた。
「あの……今、帰り?いそいでる?」
「いや……別に」
「じゃあ、ちょっとお話してもいい?」
「あ、はぁ……」
なんだ、何だっていうんだ。
「先輩、ちょっと」
和樹がこっちに気づいたみたいだったので、なるべく人がいない用務員入口に、新川先輩を手招きした。
「悪い……友達がすぐ、からかうから。……で、話って?」
あぁ、と納得して、新川先輩は俺を見上げる。
「あのね、演説の日……怒鳴ったでしょ?」
「あぁ……おう」
「やり方は乱暴だったけど……助かっちゃった。ありがとね。お礼を言いたかったの」
そう言うと、新川先輩は照れくさそうに笑った。
お礼なんて……それだけの為に、呼び止めなくていいのに。