不良狼の一途な溺愛
「ごめん…。今日…蓮君に“付き合え”って呼び出しをくらってるんだ…。」
ハハ…と悲しく笑うと、沙織は残念がるかと思いきや、キラキラと目を輝かせた。
「キャーッ!紫堂君とデートだなんて、すごいじゃん!柚ってば、着実に紫堂君との距離を深めてるのねっ!」
「で、デート!?誤解だよ、誤解!!多分、蓮君の用事に付き合わされるんだと思う。一人だと不都合なことでもあるんじゃない?」
どんなことをするのか、考えるだけで、ますます不安になっていく。
そんな私の両肩に沙織はポンと手をのせた。
「柚…。アンタって、恋に憧れてるわりには鈍いのね…。」
「は、はい?」
苦笑する沙織を前に、私は疑問符を浮かべた。
鈍い…かなぁ?
相手は校内外で名を轟かせている不良の蓮君なんだよ…?
“付き合え”っていう言葉から、デートを連想するのは無理がある。
あり得ないって。
ウンウンと心の中で頷いた私は、ふと時計に視線を向けた。
あ…。
そろそろ出発しなくちゃ。