不良狼の一途な溺愛
「やっぱりさっきの方がいいと思うんだけど…。」
「何言ってるの!紫堂君、カッコいいし目立つ人なんだから、これぐらいが丁度いいわよ。」
「うぅ……」
鏡の前でソワソワする私に、沙織は満足げに笑みを見せた。
淡いピンクのロングニットカーディガンに、白のチュールスカート。
髪の毛はサイドでゆるくお団子にまとめられてしまった。
「柚は可愛いんだから、その魅力を紫堂君にも見てもらわなくちゃダメよ!」
「魅力なんてないってば!や、やっぱり元の服に…」
「ほらほら、そんなことしてたら待ち合わせ時間に遅れちゃうよ!さぁ、出発!」
「えーっ、そんなぁ…。」
グイグイと私の手を引いて部屋から連れ出した沙織。
家の外へ出ると、ポンッと私の背中を押した。
「行ってらっしゃい!紫堂君とのデート、楽しんで来てね〜!」
「だ、だからデートじゃないよ…。」
ヒラヒラと嬉しそうに手を振る沙織を背を向けて、重い足取りで駅の方に向かって歩き始めた。