不良狼の一途な溺愛
ギクリと肩が上がる。
蓮君も男の子の声に反応して、私の方に視線を向けた。
「柚、なんでそんなに俺から離れてんの?」
「えっと……」
怪訝そうな目で見つめられた私は、冷や汗が背中をつたった。
ここは素直に事情を話そう。
そう思い、ビクビクしながら言葉を続けた。
「実は、お母さんから急用のメールが来たので、帰らなくちゃいけなくなったんだ…。」
「そうなのか?じゃあ家まで送る。」
えぇっ!?
思わぬ蓮君の返答に驚いてしまった。
そんなの無理。
家まで一緒に帰るだなんて、気力がもたない…。
私はフルフルと首を左右に振った。
「あ、あの…帰りにスーパーに寄らないといけないから、一人で帰るね。蓮君、今日は色々とありがとう。そ、それじゃあ…。」
「えっ、柚!?」
ペコリとお辞儀をした後、私は逃げるように、蓮君たちから離れる。
その際、“陸都、てめぇのせいだぞ!”と怒る蓮君の声が耳に届いたけど、振り返ることなく走った。
そう言えば、陸都君が来る前に…蓮君が何か言おうとしてたよね…?
あの続きは、何だったのかな…?