不良狼の一途な溺愛
「はぁ……。」
「こらこら!朝から盛大な溜め息を零しちゃダメよ。せっかく、新しい学生生活がスタートする日だっていうのに。」
微睡みそうになる、春の暖かくて穏やかな朝。
玄関先で、お母さんに軽くおでこを突かれた私は、ツンッと口を尖らせた。
「既に新学期は始まってるもん…。私も入学式に出て、みんなと一緒にスタートしたかったなぁ…。」
「過ぎたことを色々言っても仕方ないでしょ?あっ、リボンが曲がってる…。柚、ちょっと動かないで?」
「う、うん…。」
お母さんは制服のリボンを整えると、一歩後ろに下がって、私を見つめた。
「あら、いいじゃない!華の女子高生って感じね〜!」
「うん……。」
力なくポツリと呟くと、お母さんはポンポンと私の肩を軽く叩いた。
「ほらっ、いつまでも落ち込んでないで、笑顔で行ってらっしゃい!」
「じゃあ、行って来ます。」
満面の笑顔で手を振るお母さんに圧倒されながら、私は家を出た。