不良狼の一途な溺愛
慌てて立ち上がった私。
手にしていたカバンと、スカートについた砂を軽く払った。
「それでは、し…失礼します。」
紫堂君にクルリと背を向けて、職員室の方にダッシュしようとすると…
「おい、待て。」
すかさず不機嫌そうな声で呼び止められてしまい、ビクッと肩が跳ね上がった。
えぇっ!!
どうしよう、“待て”って言われちゃった…!
これは、相当マズい展開なのでは……。
静止する私だけど、足はガクガクと震える。
少しでも気を緩めたら、立っていられなくなりそうだ。
「え、えっと…まだ何か?」
紫堂君の顔を見ることなんて出来ないので、背を向けたまま聞くと、ダルそうなため息が返ってきた。
「俺の本、持っていく気?」