不良狼の一途な溺愛

うっ、怖い…。


ますます不機嫌オーラを増している紫堂君に体がすくむ。


鋭い眼差しに固まっていると、私の目の前に彼の手が差し出された。


「早く返せって。」


そんな風に急かさないでよ!


こっちは恐怖で体が上手く動いてくれないんだから。


本人に言葉をぶつけられないので、心の中で文句を言う。


「す、すみません…。」


これ以上、波風をたてないように謝りながら、マンガ本を紫堂君の手にのせようとした私だけれど…



「きゃっ!」


彼の手のひらを見た瞬間、思わず声をあげてしまった。



や、やだ…。
ケガしてる…。


手にはすり傷があって、血が渇いていた。



< 22 / 364 >

この作品をシェア

pagetop