不良狼の一途な溺愛
「あっ、いけない!私…職員室に用事があるんだったわ!ごめんね、柚!」
パンッと顔の前で手を合わせて謝った沙織は、アタフタしながら職員室の方へと走って行ってしまった。
今日の沙織は、慌ただしいなぁ…。
ハハ…と苦笑した私だったけれど、次第にそれは溜め息へと変わっていった。
気合いで乗り切る…なんて言われてもなぁ…。
蓮君が謹慎に至った事情は未だ分からないままだもんね……。
ふと頭の中に、朝のホームルームのことが浮かんだ。
担任の風間先生は、蓮君のことを欠席と言うだけに留めて、それ以上の詳しい話は何もしなかった。
クラスのみんなが動揺をしないようにと思ってのことかもしれない。
だから、沙織を始めとしてクラスの子たちも、蓮君が欠席している本当の理由は知らないのだ。
うーん…。
それにしても、信じられない。
今の蓮君が、謹慎になるようなことをするなんて思えないんだけどな…。
ボンヤリと考えながら歩いているうちに、私は教室とは別の方向に来てしまっていた。