不良狼の一途な溺愛
ソワソワと落ち着かない気持ちで午前中の授業を過ごし、お昼休み。
早めに昼食を済ませた私は、あの中庭へと向かった。
紫堂君、今日も木の上でマンガ読んでいたりしないよね…?
また会うのは避けたいなぁ…。
居ませんように、と心の中で祈りながら足早に歩く。
渡り廊下の前までやって来ると、校舎の影からソーッと中庭を覗いた。
誰も居ない…。
桜の花びらがヒラヒラと舞う、静かな中庭。
念のため、木の傍まで駆け寄って上を見上げてみたけれど、紫堂君の姿は無かった。
良かったぁ…。
途端に安堵感が体を駆け巡った。
まあ、不良なんだし…毎日学校に来てるわけないよね…!
今日はサボって家で寝てるのかも。
勝手に想像しながら、私は視線を地面に落とした。
さてと、学生証を探さなくちゃ…。
確か…この辺りに紫堂君が飛び降りて来て、私が尻もちをついたんだよね…。
一人で身振り手振りを加えて再現をしながら、その場所に落ちていないか、じっくりと探す。
うぅ…。
見当たらないなぁ…。
ここでもなかったのか…とガックリと肩を落とした。
「柚、そこで何やってんの?」