不良狼の一途な溺愛
「そ、それ…どこにあったんですか?」
「そこ。」
紫堂君が指差したのは、まさに私が尻もちをついた辺りだった。
や、やっぱり…ここで落としてたんだ…。
「もしかして、この学生証を探しに来たのか?」
「は、はい…。」
あぁ、恥ずかしい…。
散歩だなんて変なこと言わなきゃ良かったな…。
顔を俯けると、紫堂君は学生証をスッと差し出した。
「大事なものだろ?今度は落としたりすんなよ?」
「えっ…」
う、うそ…。
そんなにあっさり返してくれるの…?
“簡単には返してやらねぇから”的なことでも言われるかと思ってた…。
予想外な優しい言動に、私は目を見開いてしまった。