不良狼の一途な溺愛
「どうしたんだよ。早く受け取れって。」
「あっ、すみません…。」
慌てて紫堂君から学生証を受け取った。
拾ったものをちゃんと返してくれるなんて…
紫堂君って、不良のわりには…いいところもあるんだ…。
何はともあれ、無事に見つかって良かったぁ…。
そんな安心感から、自然と笑みが零れた。
「紫堂君、ありがとう…。」
不良とは言え、きちんとお礼は言わないとね…。
頭を下げた後、紫堂君を見ると…私を見たまま固まっている。
えっと…どうしたんだろう?
別に変な言い方はしてないと思うんだけど…。
無言の紫堂君に首を傾げた。
あっ、ひょっとして…早く一人になりたいのかな…?
ここに来たってことは、この後の授業をサボって、桜の木の上でくつろぐつもりなんだろうし…。
私が邪魔なんだ、きっと。