不良狼の一途な溺愛

「おい兄貴、柚と親しげに話してるんじゃねぇよ。」


不機嫌そうに眉をしかめながら、お兄さんを睨み付ける。


つい今しがたまで笑顔だったのに、あっという間に変わってしまった。


「お前が柚ちゃんの差し入れに夢中になってるからいけないんだろ?」


「そりゃ夢中になるに決まってんだろうが。柚の手作りなんだし。」


蓮君の視線が私へと向けられる。


「柚、マジでありがと。」


「うん。どういたしまして…。」


あらためてお礼を言われて、私は笑顔で言葉を返した。


お菓子もお弁当も、作ってきて本当に良かった…。


ほっこりとした温かい気持ちに包まれていると、お兄さんが“あっ!!”と何かを閃いたかのような声をあげた。


「せっかくだから、3人で夕飯食べないか?」


「えっ?」


お兄さんからの突然の提案。


私と蓮君の視線は、お兄さんの方に注がれた。


「なんで兄貴と一緒に食べないといけねぇんだよ。」


「たまにはいいだろ?今日は美咲(ミサキ)が女友達と食事会だっていうから、夜は家にいないんだよ。」


奥さんの名前、美咲さん…って言うんだ…。


どんな人なのかなぁ…。


そんなことを漠然と考えていると、蓮君の溜め息が聞こえてきた。



< 351 / 364 >

この作品をシェア

pagetop