不良狼の一途な溺愛
「おい兄貴、柚と親しげに話してるんじゃねぇよ。」
不機嫌そうに眉をしかめながら、お兄さんを睨み付ける。
つい今しがたまで笑顔だったのに、あっという間に変わってしまった。
「お前が柚ちゃんの差し入れに夢中になってるからいけないんだろ?」
「そりゃ夢中になるに決まってんだろうが。柚の手作りなんだし。」
蓮君の視線が私へと向けられる。
「柚、マジでありがと。」
「うん。どういたしまして…。」
あらためてお礼を言われて、私は笑顔で言葉を返した。
お菓子もお弁当も、作ってきて本当に良かった…。
ほっこりとした温かい気持ちに包まれていると、お兄さんが“あっ!!”と何かを閃いたかのような声をあげた。
「せっかくだから、3人で夕飯食べないか?」
「えっ?」
お兄さんからの突然の提案。
私と蓮君の視線は、お兄さんの方に注がれた。
「なんで兄貴と一緒に食べないといけねぇんだよ。」
「たまにはいいだろ?今日は美咲(ミサキ)が女友達と食事会だっていうから、夜は家にいないんだよ。」
奥さんの名前、美咲さん…って言うんだ…。
どんな人なのかなぁ…。
そんなことを漠然と考えていると、蓮君の溜め息が聞こえてきた。