不良狼の一途な溺愛
渡り廊下にやって来ると、中庭にいる紫堂君が視界に入る。
今日は、桜の木の下で幹に背をもたれて立っていた。
「あ、あの…紫堂君。」
ぎこちなく声を掛けると、紫堂君は私に気付いて視線を向けた。
「結構、早かったな。」
「は、はい…。」
とてもじゃないけど、モタモタしてなんかいられなかったよ…。
そんなことしたら、怒られると思ったし…。
ビクビクしていると、紫堂君は私の傍へと近付いてきた。
「そ、それで…話というのはなんでしょうか…?」
「あ、ああ…。それは…」
ん?
なんか、紫堂君…急に歯切れが悪くなったような気が…。
どうしたんだろう?
不思議に思っていると、紫堂君は私の手首を掴んだ。