不良狼の一途な溺愛
クラスのみんなが、各自の席へと慌ただしく戻り始める。
私の席の傍でしゃがんでいた沙織は、立ち上がるとニッコリと笑みを見せた。
「柚、あとで事情をゆ〜っくりと聞かせてねっ!楽しみにしてるから!」
「えっ…」
ちょっと!
楽しみにしてもらうような話は何もないってば!!
足取り軽く歩いて行く沙織の後ろ姿に向かって、心の中で叫んだ。
「おい、柚。」
「何ですか…?」
暫く、そっとして置いて欲しいんですけど。
ガックリと肩を落としながら紫堂君の方に視線を向けた。
「お前、さっきから他の奴らばっかり見てるんじゃねぇよ。もっと俺を見ろ。」
「…………。」
な、何言ってるんだ…この人。
あの状況で、紫堂君をずっと見ていられるわけないじゃん!!
先ほどの空気を、まるで察してない紫堂君にイラッとしてしまった。