不良狼の一途な溺愛
「陸都、どうしてお前…柚の手を握ってんの?」
あっ、そう言えば…。
さっき、陸都君に手を握られて、そのままだったんだ…!
紫堂君の鋭い眼差しを辿って、私も握られている手に視線を落とした。
「い、いや…これに深い意味はねぇんだって!柚ちゃんをここまでちゃんと案内しようと思って握ったんだよ。」
「…………。」
無言の紫堂君は、納得いかない…と言った感じで、ますます不機嫌な表情になっていく。
「ごめんね…柚ちゃん!」
「あっ、うん…。」
そんな尋常じゃないオーラを察したのか、陸都君は慌てて私の手を離した。
手を握られてたのは私なのに、どうして紫堂君がムスッとしているんだろうか…。
不思議に思っていると、陸都君は私に向かって軽く手を振った。
「じゃ、じゃあ…俺はそろそろ帰るよ。」
「えっ…もう帰るの!?今、来たばかりなのに…?」
「うん!またね、柚ちゃんっ!」
チラチラと紫堂君を気にしながら、陸都君は逃げるようにして屋上から出て行ってしまった。