これを運命とするならば
しかし狭川と呼ばれたその人はめげることなく笑顔で私に近づいてくる。
「初めまして。俺は狭川誠と言いまして三柴とは同じ大学だったんだ。………しかし美人だなぁ。ねぇ名前は?彼氏いる?」
「こ、こちらこそ」
よろしくお願いします、と言い切ろうとしたのに私の口は何かに遮られた。
「―――仕事に戻れ」
氷のように冷たい声が私のすぐそばで聞こえて、それで私は三柴さんの手で口を塞がれていることがわかった。
しかし狭川さんはひるむことなくへらりと笑う。
そしてこう言い残して部屋から出ていったのだった。
「…またね、秘書さん」