これを運命とするならば
私がそう呟くと、狭川さんはさっきまでの雰囲気からがらりと変わりすっと真顔になった。
ソファにもたれ、腕を組むと静かに口を開く。
「あいつはね、欲しいものを正直にねだるのが下手なんだよ。見てればわかる。諦めたような顔をして、それでも欲しくて欲しくてたまらない。…三柴のそんな表情初めて見たよ」
溜息をつくと、立ち上がって私をまじまじと見つめた。
「椿ちゃんがそうさせてんだよ?」
いつものようにへらりと笑うと、部屋から出ていった。
さっきのお誘いは冗談だよ、と言い残して。
私のわからないところで話が進んでいるようで、なんだか居心地が悪い。
そのまま午後の始業時間になったけど、宣言通り三柴さんは戻ってこなかった。