碧いボール
第零章

妄想モード

・・・・・・一度でいいから、勝ってみたいな。
なんて、妄想をしながら歩く。
そう、妄想。
妄想は所詮妄想で、叶いもしない、「夢」。

あたしは相川有希。
中2で、清勝中学校女子バスケ部の部長・・・つまり、キャプテン。
今も、練習に向かう途中。
その足取りは重くない。むしろ軽い。軽すぎるくらいに軽い。
あたしはバスケが大好きだ。
ドリブルをしているとき。
仲間にパスをするとき。
相手のボールをカットするとき・・・。
なにより楽しいのは、シュートが決まった瞬間。
あたしたちは弱いから、比較的スタメンばかり出ている。
でもそれは顧問の芦田の意思で・・・あたしは、みんなを出させてあげたい。
あたしが出れなくてもいいから、みんなにもこの感動を味わってほしい。
そのためなら、負けたって構わない。
そう思っていたけど、最近は「勝たないと」って、思ってしまう。
それは、みんなにも勝つ喜びを味わってほしいから。
だからあたし一人の力でも。って、つい頑張りすぎちゃうんだ。
練習には休まず参加して、自主練習もこれまで以上に・・・。
そんなに頑張れるのは、あたしがバスケを好きだから。
大好きだから。
正直、今が一番楽しい。
彼氏よりもバスケが好き。
・・・そのくらい、好きだったのに。

あたしは今日、バスケが世界で一番嫌いになる。
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