碧いボール
顧問を取り戻せ!
白亜Side
あ、どうも、白亜です。
有希の隣の家の・・・まあ、幼ななじみ。
実は俺、有希のこと好き・・・とか言って。
でも俺、年下だから、大きな声で言えなくて・・・だから、ずっと隠してる。
有希への気持ちを隠してる。
だけど、やっぱ好きな人が困ってたら助けたいよな・・・なんて思うのは、俺が男だからなのか?
・・・わかんないけど、とにかく今は、泣き顔の有希を助ける。
まずは、話を聞かないと。
一通り有希の話を聞き終えて、なんと言うか・・・絶句した。
俺もバスケをやってるからわかるけど・・・「碧いボール」だなんて、杏姉ちゃんもキツすぎるよ。
あ、ちなみに俺、杏姉ちゃんのことも知ってます。
同じく幼ななじみです。
仮に優勝できたとしたって、そんなに仲間割れが激しくて、顧問もいない部活になんて、「碧いボール」を手に入れることできるわけないじゃないか。
そもそも、伝説なんだから。
あるかさえもわかんないんだから。
有希には・・・なんて言えばいい?
どう慰めてあげればいい?
考え抜いて、俺が言った言葉は・・・「頑張って」。
それしか言えなかった。
予想通りに、有希は傷ついたような表情を見せた。
ごめんな・・・。こんなことしか言えない奴でごめんな。
・・・でももうひとつ、言いたいことがある。
「なあ、有希。有希たちのチームが『碧いボール』手に入れるならさ・・・まず、顧問を正常につかせないとだめだと思うんだ」
有希は驚いたような顔になる。
「まともなチームにしか権利はないんだよ。仲間割れは激しい、顧問は放任してるし・・・って、そんなチームに見つけられないよ」
有希がうなずく。
芦田とかいう顧問を取り戻せるのは有希だけ。
あと・・・杏姉ちゃん派に、全力出させるのは・・・杏姉ちゃんにやってもらわないと。
「可能性はないことはないから。あきらめないでね。死ぬほど練習して・・・必ず優勝してね」
有希は、もう泣いていなかった。
晴れ晴れとした表情で、俺の言うことを聞く。
決心したように。
でも・・・有希。
残酷すぎて言えなかったけど・・・ねえ、有希。
・・・・・・知ってる?
家のドアをくぐる有希に・・・どうしても言えないこと。
言わないとだめなのに、後で自分が後悔するってわかってるのに・・・言えないよ。