碧いボール


白亜がなんか言いかけたけど、言葉につまってたみたいだから、聞くのはやめた。
時間は6時。
お腹すいたな・・・。
今日は色々ありすぎたもんなぁ。
お父さんはいたけど、ご飯なんてつくるわけがないので、今日もカップラーメンを食べますか。
家はなんというか・・・その、家庭環境がよろしくない。
お母さんはいない。
お父さんはいるけど、意味がないっていうか、芦田みたいな感じ。
あたしがいてもいなくてもお父さんには関係ないみたいで、実の父親だから、ちょっと悲しい。
ご飯とか、もう少しあたしをたよってくれてもいいのに・・・なんて思う。
でも、生活費とかは全部お父さんが払ってくれてるから、文句は言えない。
何かと小3くらいからこんな生活が続いてるから、あたしは料理が大好き・・・ていうか必然的に得意だし、お父さんも健康とはいえないんだろうな。
あたしたちは、一緒に暮らしてる・・・っていうのは形だけで、実際はかみ合わないから、お互いのこと、何も知らない。
お父さんはあたしが小3のころから、かれこれ5年とかは、コンビニ弁当生活を送ってる。
あたしがご飯を作ったことなんて、一度もない。
あたしの話し方からして、多分離婚だと思ったんだろうけど・・・実は違う。
お母さんは、あたしが小2の終わりくらいのときに、死んじゃったんだよね・・・。
親バカ?いや、子供バカ?ってくらいに優しいお母さんだった。
欲しい物は何でも買ってくれる、とか、そういう優しさじゃなくて、人間的な優しさ。
だめならちゃんと叱ってくれたし、ほめるときはほめてくれた。
学校の先生に怒られるのは嫌だったけど、お母さんに怒られるのは不思議と嫌じゃなかった。
クサイ言い方すると「愛のムチ」。
まさにそんな感じ。
お母さんの怒声からは、深い母親の愛情を感じた。
今考えれば、あたしたち家族の生活って、全てお母さんで回ってたんだな・・・って思う。
お父さんも、お母さんが生きてたころはあたしにバスケでも何でも教えてくれたし。
それは多分、いつになっても若くて優しいお母さんに対して、「いい旦那」でいたかったからんだろう。
そう考えてみれば、お父さんも愛しく思える。
あたしの家族。大好きな・・・お父さん。



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