碧いボール
お父さんSide
こんにちは。有希の父の、正樹と申します。
職業はごく普通の会社員です。
5年前でしょうか。
妻の亜紀が亡くなって、私は自分でもわかるほどに、その生活が色あせたように思えます。
亜紀がいたころは、娘も私に「バスケ教えて」などとかわいく頼んできていたのですが、今はそんなことしません。
私に遠慮しているんだと思います。
本音は、もっと私に頼ってほしい。
贅沢だっていうのはわかるけど、私だって父親ですし、娘の成長を見守りながら、ときに手を差し伸べて、助け合いながらすごしていきたい。
私だって大人です。
娘の成長につれて、「女の子」から「女性」に変わることだって理解しているつもりですし、娘がそれを隠しているのが微笑ましい。
母親のように道をつくってやることはできないけれど、私は有希を見守っていますね・・・。
でも、有希。
何かあったらいつでも頼ってください。
そして再びわかりあえたら、私においしいご飯をつくってくださいね。
私は口にすることなく、有希の背中にメッセージを残した。