碧いボール
第参章

奇跡の一勝

芦田が無事戻ってきて、表面上は普通のチームに戻れたあたしたちに降りかかる最初の試練は、「県選抜予選」。
「県選抜」っていうのは、個人選抜の第一次選考をするための大会。
そこで選ばれた50人の中から、25人をさらに選考して、最終的には18人にまで選び出す。
県全体で選ぶから、かなり難しいんだけど、あたしたちみたいなレベルには程遠いから・・・あたしたちは、大会での勝利だけを目指します。
あ、ちなみに選抜メンバーが18人なのは、予備メンバー?が3人いるからなの。
県単位だから、遠い人もいたりして・・・来られないことも多いみたい。
あたしはよく知らないけど、芦田が言ってた。

厳密なるくじの結果、あたしたちの相手は「峠中」。
あたしたちと同じくらいか・・・少し格上の相手。
でも、一生懸命やれば勝てないことはない相手だ。
というわけで、あたしたちは峠に勝つことだけを考えて、全員が頑張った。
その大会の真の目的が、「選抜選考」であることも忘れて。
峠対策にと、芦田が峠のデータを大量に集めて、みんなでDVDを鑑賞したり。
とにかく、がむしゃらに練習したんだ。
初の勝利が、すぐそこにあるから。
こんなチャンスは、もう二度とないだろうから・・・。
あ、どうしてかっていうのは、普段の大会や練習試合は、「地区」とか「市」単位でやるの。
だから、あたしたちより弱いチームなんてなくて。
同じくらいのレベルもいない。
だから、「県」という広範囲の大会はこれしかないし、その中で同レベルなチームと当たれるのも、これが最後かもしれないから。

大会当日。
朝一番の試合で、審判と峠、選考委員とあたしたち以外に、お客さんはあまりいなかった。
張り詰めた空気と、肌寒い空間の中で、試合開始のホイッスルが鳴った。
ジャンプボール。
見事清勝がボールを制し、開始4秒で杏がレイアップを決めた。
・・・先制。
その後の試合も、清勝の流れに乗せられた峠は、疲れきって手も足も出ず、なんとあたしたちは・・・・・・勝利した。
夢の初勝利。
念願の初勝利。
うれしすぎて、涙も出なかった。
言葉も出なかった。
ただ、杏たちと抱き合って、初勝利を喜んだ。
これで、またチームが更正されたな・・・。
勝利よりも、そのことが嬉しかった。

しかし、勝ってしまったあたしたちには次の試合が待っている。
次の相手は、中体連決勝の常連、超強豪「南中」。
もちろん成す術もなく・・・あっけなく敗北。
まあ、ここで勝てるとは思っていなかったから・・・でも、峠に勝てたのはチームとして大きかった。

次の日は月曜日。
放送で杏とあたしが呼び出されて、芦田から衝撃の言葉を告げられた。
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