碧いボール
ふー。
晴れない気持ちに反比例して、気持ちのいい朝。
すーっとカーテンを開けて思い切り空気を吸い込む。
今日もまた、学校に行かないとだめなのか。
こんな天気の日はゆっくり寝てたくなる。
でも、そんなことは許されないから、しかたなくお父さんの待つ一階へ行く。
「おはよー、お父さん」
「おはよう、有希」
嬉しい。こんな日をどれだけ夢見てたか。こんな平凡な家族を、どれだけ望んだか。
でもすぐに、このお父さんがいなくなる・・・・・・。
あたしは首を振った。
そんな世界、考えたくもない。
一瞬、さっきまでお天気だった空が、真っ暗になった気がした。
「お父さん、朝ごはん何がいい?」
「作ってくれるのか、嬉しいな。何でもいいよ。普通のご飯がいいかな」
「何でもよくないんじゃん!いいよ、あたしが作ってあげる。料理の天才なんだから。楽しみにしててね」
「うん。楽しみだなあ」
そう言うお父さんは、心底嬉しそうで、なんでもっと早くこうならなかったんだろうと、あたしは強く後悔した。
お父さんSide
おいしい。おいしい。
私は我を忘れて有希の作った朝ごはんを頬張っています。
メニューは、炊きたてのご飯で作ったおにぎりと、豆腐の味噌汁、有希お手製のたくあんと、さんまの塩焼き。
日本の朝ごはんなのは、昔私が好きと言ったからでしょうか。
おいしい。とにかくおいしい。
かなり長い間、コンビニ弁当や出前、ファーストフードなどで済ませていたご飯です。
お昼だって、会社の食堂は値段が高いのでいけないので、いつも近くにある激安弁当で済ませていました。
もちろんそのお弁当は、素材の少なさで稼いでいますので、その分調味料が増してあるわけです。
味が濃いのなんのって。
しばらく・・・我が家の薄味を忘れていました。
今日、たくさんのものを取り戻せた気がします。
ありがとう、有希。ありがとう、芦田先生。