碧いボール
お父さんに朝ごはんを食べてもらい、あたしも食べ終わった。
今日は二人分作ったから、いつもより時間かかっちゃったな。
でも、いい。今日は遅刻してもいい。
「いってきまぁす!」
「いってらっしゃい」
近所の人が思わず振り向くほどの大声で、お父さんが叫ぶ。あたしに手を振る。
お父さん、こんな人だったっけ。
とにかく今は、それが嬉しい。
ちょうど家から出てきた白亜が、あたしに負けないくらいの笑顔でお父さんに手を振る。
お父さんはもっと大きく振りかぶって、あたしと白亜は呆れ顔で見つめる。
昨日、白亜に電話した。
白亜は泣いた。
まさかあの白亜が泣くなんて。
それほど、お父さんのことを思ってくれたってことなんだね。そう考えていいんだよね。
ありがとう、白亜。
やっぱりあなたは、あたしの好きな白亜だよ。
学校に着くと、またいつもの「今日」が始まる。
部活を抜いて、何の面白みもない「今日」。
学校生活は、部活が全てだよね。
あたしはやっぱり、バスケを除いて何もない。
だから、必ず選抜にならなきゃ。
いつもと同じく今日が回って、3時間目が終わったとき。
「女子バスケ部、相川さん、職員室芦田まで」
と、校内放送で呼び出しされた。
お父さんのことかな?選抜のことかな?
何にしても、と思い急いで職員室に向かう。
「おお、相川。呼び出して悪いな。セレクションのことなんだけど」
ああ、選抜関係か。
「有希は呼ばなくていいんですか?」
「おう、お前があいつに伝えてくれればいいよ」
あたしが有希に言うんだ。芦田はあたしたちのこと、知ってるんじゃないの?
そのあと、4時間目の始まるチャイムぎりぎりまで、芦田はあたしに説明した。
内容は、持ち物とか、チーム分けとか、たいしたことなかったんだけど、芦田は最後に、
「あいつにちゃんと伝えてくれな」
と言った。
当たり前でしょ?顧問からの連絡なんだから。
そしてつまらなかった今日も終わり、楽しみな部活がやってくる。