碧いボール


まだショックから立ち直れていないあたしに、杏が何か話している。
でもあたしには、それさえも聞こえない。
ああ、だめだな、あたし。
色んな問題がくっついてくるのに、ショックを受けっぱなしじゃ、だめだよね。
何とか持ち直して、最初に頭に浮かんだ文字は・・・「廃部」。
この4人がやめたら、残りの部員は4人。
バスケには、最低でも5人必要だから、校則にあるように、廃部になってしまう。
杏たちがやめたいって思ってること、あたししか知らないから、残る3人は明日も明後日も、必死に練習するんだ。
ただ、勝つために。
半分の部員に批判されても、まだあたしについてきてくれる部員もいるわけで。
その人たちを裏切っていいの??
でも、あたしが止めたら、ここにいる人たちの意思はどうなるの?
・・・・・・わかんないよ。
それより先に、理由。
聞きたくないけど、聞かないと。
考えに考えて、あたしが出した結論は・・・「否認」。
納得するまで、退部はあたしが認めないんだから。
・・・ここだけの話、これはあたししか知らないんだけど。
退部には、本人と、親と、顧問と、部長・・・キャプテンの承諾が必要なんだ。
つまり、この人たちの退部は、あたしが認めない限り成立しないの。
だったら、意地でも反対し通してやる!
仕方ないよね。あたしたち・・・少なくともあたしには、杏が必要なんだから。
それは決して、バスケの戦力としてだけじゃなくて。
あたしは言った。
少し間があいて不自然になったけど、考えていたということにしておく。
杏はわかってくれる。
「どうして・・・理由、教えて。納得できないよ」
「理由?そんなの簡単じゃん」
杏が少し間を置いて続けた。
「有希が、あたしたちを頼ってくれないから」
・・・へ?
「有希が一人で頑張って、あたしたちにろくに練習もさせてくれないから」
そんなこと、したかな??
杏の言ってることが、全くわかんないよ・・・。
そこに杏が釘をさす。
「杏が頑張りすぎるから。一人でやろうとするからだし」
あ・・・・・・。
それに関しては何も言えない。
確かに最近は、あたしが自分でもわかるくらいに一人で進めてる。
言ってみれば、自己中心的?
そしてそれを、みんなに押し付けてるんだ・・・「みんなのため」とか言いながら。
それって本当にみんなのためだったのかな?
・・・いや、違う。
あたしは偽善者だ。
口ではそう言いながらも、実際やってることは違う。
ただの自己満足。
あたしは最低なキャプテンだ。
・・・・・・あたしもう、キャプテンでいられないんじゃないかな。



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