碧いボール

中体連

結局、あのときのは夢だったみたいで、でも夢にしては妙にリアルで、あたしはその感覚を忘れられずにいた。
刻、一刻と中体連はこちらに歩み寄ってきて、また辛い夏が来る。あたしたちは中体連に向けてラストスパートをかけていた。
フィジカルメニューは少なめにして、技術的な面に磨きをかける。でも、あたしたち流のバスケを失わないように、そこは常に高く持つ。
あれから何度か練習試合をやったけど、清祥は確実に強くなっていた。
今までなら到底敵うはずのなかった相手を余裕で倒してしまったり、男子と並ぶレベルまで実力を上げたり。
何で急にそこまで成長した?
あたしは自分でも死ぬほどびっくりしていた。
これなら優勝も夢じゃないかも、って、本気で思ってた。
そのとき、杏が前から走ってきた。
「有希、どうしよう、大変。麻紀が・・・ねんざしちゃったみたいなの」
うそ!麻紀がいなかったら、中体連で優勝なんて無理に決まってる。
中体連まであと2週間。麻紀はそれまでに回復して、練習の遅れを取り戻せるかな・・・。
とにかく、麻紀なしにして清祥はやってられない。
麻紀は杏と同じくらい大切な存在。もちろん、みんな大切だけど。
大変だ。これは予想してなかった非常事態だ。


麻紀Side
それは何の前触れもなく突然襲った出来事だった。
あたしはその時、ディフェンスの練習をしていて、前にいた杏が、こっちをまっすぐ見つめる。
いいね、杏。その挑発的な視線、大好きだよ。
杏が周りを確認すると、大きく息を吐いて切り込んできた。
「ナイスシュート!」
みんなが歓声を上げる。そのとたん、あたしの足に耐え難い痛みが走った。
「麻紀、麻紀、どうしたの・・・」
動きを止めるあたしに誰もが心配してくれる。
杏がどこかに走っていって、数分後には隣に有希がいた。

そのあとあたしは芦田の車で病院に駆けつけ、早かったために休む期間は1週間。なんとか中体連には出れそう。
「有希、あたし、中体連は出れそうだよ。大丈夫だよ」
「うん。当たり前でしょ。期待してるよ」
こんなにも有希は信用してくれてる。
中体連も頑張れる。
それにこの頃、バスケが楽しいなって思えてる。今までにない進歩だ。
あんなこと言った手前、碧いボールを何としてでも見つけ出さないといけなくなったし、今更なしにするのはかっこわるい。
みんな、頑張ろうね。
真っ青な空、一緒に見ようね。
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