碧いボール
第五章

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「清祥!」
「「「ファイト!」」」
「清祥!」
「「「ウィナー!」」」
「清祥~~~~!」
「「「ナンバー1!!!」」」
いつにも増して大声で円陣を組み、天井に向けて突き上げた1の指が、勝利への努力を語っている。
張り詰めた空気の中、ビーという音とともに高く打ち上げられたボール。
ジャンプボールは清祥が先制した。

一回戦の相手はあまり強くないチーム。くじ運が良かったのか、それも碧いボールに導かれたのか、意外とすんなりと勝てた。
二回戦目も、同じくらいのレベルのチームとの対戦になり、練習しすぎというほどに練習したあたしたちは、楽に勝てた。
今までに勝ってきた二つのチームのためにも、あたしたちは必ず優勝する。

あたしたちの地区の中体連は変わっていて、チームの数が少ないから、一日で優勝まで決まってしまう。
なんとチーム数は12チーム。その頂点に立つのは、簡単そうでそうでもない。
すでにあたしたちは準決勝までコマを進めていて、ほんとに優勝できてしまうのではと思えた。
準決勝は、安易ではなかったけど4点差で勝利し、残すは決勝となってしまった。
・・・すごい。
あまりにも簡単にここまできてしまった。
あたしたちは強くなりすぎたのかもしれない。
芦田との信頼関係を取り戻したのが吉とでたのか、何より練習がものをいうのか。
今日という短い日の間にも、新聞やテレビでは清祥のことが大きく取り上げられていた。
「清祥女子バスケ部の快進撃!!優勝まであと少し」
あたしもインタビューを受けたけど、あれはほとんど誘導尋問だな。
そんなことを思い出して笑っていると、笛の音がした。
忘れてた、今はもうジャンプボールだ。

ここにきてはじめての先制をとられて、清祥はリズムをくずしてしまった。
1ピリは12-8とあたしたちがやや遅れている。
これは大変と思った芦田が、作戦を変えてきた。
試合再開の笛が響き、こっちボールでの開始。
あたしのスローインはみごとに杏に届き、杏が1-1の状況でレイアップを決めた。
そのあとも、杏の大活躍により、2ピリは9点差を離しての大逆転となった。
10分の休憩の間に、芦田が言った。
「大丈夫。必ずうまくいくよ。相川・・・信じろ」
2ピリで絶好調だった杏とは裏腹に、特に何もできなかったあたし。
この一言で、どんなに励まされたかわからなかった。
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