碧いボール
しんとした沈黙を破るように、あたしたちの家族が押しかけた。
「白亜!お父さん!」
「有希・・・おめでとう」
お父さんが涙声で言う。
「有希・・・かっこよかった。ずっと・・・好きだったよ」
これにはみんなが唖然とした。
お父さんだけがニコニコ笑っていた。
「ほら、返事してあげなよ。かわいそうでしょ」
麻紀があたしをつつく。
「白亜・・・あたしも、ずっと好きだったよ」

その日、奇跡が起こった。
なんと、一生完治することはないと言われていた病気を、お父さんが克服したのだ。恐るべき生命力。
奇跡に奇跡が重なって、今日はすばらしい一日になった。

ふいに、杏が窓を開けた。
見あげた空は真っ青で、伝説通りに、ずっと見ていたいなぁ・・・と思った。
今日、あたしたちが手にしたボールの色とはちがう、あたしたちが見た空の色がある。
あたしたしはその色を、思い出の試合球にこめて、碧く染めた。

あたしたち色のボールが、できあがった。

約束通りに廃部は免れて、また楽しい日々を送っている。
次にボールを手にするチームが現れるのを、楽しみにしながら。
< 55 / 55 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:1

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

ギャップ王子
Kakyo/著

総文字数/369

恋愛(純愛)1ページ

表紙を見る

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop