とある霊能力者への相談
「そうね。女将が亡くなったとなれば、旅館の経営が…」

「ああ、そうじゃないよ。ノウコさん」

苦笑しながら言葉を遮ったのは、サアヤだった。

「えっ?」

「旅館の経営は何とでもなる。問題は本当になるであろう、心霊現象の方」

「本当になる…?」

イマイチ意味が分からなくて首を傾げていると、母が説明してくれた。

「あの土地の経営者が、こんな死に方をしちまったんだ。大層な地縛霊になるだろうよ」

「でもあの土地には浄化作用があるんじゃないの?」

「だが長年住み続けた一族ならば、それを逆作用にする効果はある。特にあの女将は、それを望んでいたんだろう?」

「そっれは…」

確かに女将は望んでいた。

心霊現象が起こることを―。

「彼女は自らの命をかけて、その願いを成就させるさ。そしたらあの旅館、どうなるだろうねぇ」

「本物として喜ばれるのか、それとも―」

サアヤはニヤッと意地悪く笑う。

「逆に強すぎて、客足は遠のくのか。どっちだろうね?」

一体誰のせいだ、と言いたかったけれど言えなかった。

何故ならサアヤはあくまでも一因であり、原因は他ならぬ旅館の経営の仕方にあったからだ。

―願わくば、繁盛することを祈ろう。
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