ケイヤク結婚
 もしかして、私……大輝さんに面倒くさがられてる?

「式の打ち合わせや今夜のパーティで、俺たちは少し会い過ぎたのかもしれない」

 大輝さんが私から離れると、スタスタと前方を歩き始めた。

 そう、だよね。

 私たちは契約したんだ。お互いの夢のために。

 大輝さんは、女性からの愛情が好きじゃない。だから愛情を求められる結婚はしたくない。

 でも結婚しないと、出世へと繋がる異動の辞令が来ない。だから私と入籍をしたの。

 私だって同じ。

 どんどんと結婚していく友人たちが羨ましかった。

 仲間内で、結婚してないのが自分だけという状況には絶対なりたくて、大輝さんと入籍したんだ。

 友達の輪の中で、最後の一人になりたくない。だから……。

 私は足を止めると、スタスタと歩いていく大輝さんの背中を見送った。

 ついていかなくちゃ……って心は思ってる。なのに、足が動かない。

 どうしよう、私。どうしたら……。

 大輝さんに冷たく拒絶されたの。初めてで……。足が竦んでしまったみたい。

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