ケイヤク結婚
―綾乃side―
「綾乃?」
アパートに帰る途中、駅前で見知った顔の男に声をかけられた。
侑だ。
今日はスーツじゃなくて、私服を着ている。スーツじゃない侑は、大学生の頃と大して変わらない雰囲気だ。
「あれ? 仕事は?」
「今日は午後休をとったんだ。異動が決まったから。いろいろと身辺整理をしないと」
「異動? ああ……昇進がかかってるやつだっけ? じゃあ、大輝さんは駄目だったんだ」
私は軽く頷くと、鞄を肩にかけなおした。
「いや。夏木も異動するって聞いたけど」
「そうなの?」
「まあ、本決まりじゃないらしいから、本人の耳には入ってないかもしれないけど」
侑が肩を竦めて笑った。
「新垣さん、すみません! 駅の出口を間違ってしまったみたいで」
背後から小鳥のような可愛らしい声がして、私は振り返った。
そこにはピンクの頬紅がよく似合う桜木様が大きくな鞄を持って立っていた。
「あ! 冬馬さん、こんにちは」と、桜木様がぺこっとお辞儀をした。
「綾乃?」
アパートに帰る途中、駅前で見知った顔の男に声をかけられた。
侑だ。
今日はスーツじゃなくて、私服を着ている。スーツじゃない侑は、大学生の頃と大して変わらない雰囲気だ。
「あれ? 仕事は?」
「今日は午後休をとったんだ。異動が決まったから。いろいろと身辺整理をしないと」
「異動? ああ……昇進がかかってるやつだっけ? じゃあ、大輝さんは駄目だったんだ」
私は軽く頷くと、鞄を肩にかけなおした。
「いや。夏木も異動するって聞いたけど」
「そうなの?」
「まあ、本決まりじゃないらしいから、本人の耳には入ってないかもしれないけど」
侑が肩を竦めて笑った。
「新垣さん、すみません! 駅の出口を間違ってしまったみたいで」
背後から小鳥のような可愛らしい声がして、私は振り返った。
そこにはピンクの頬紅がよく似合う桜木様が大きくな鞄を持って立っていた。
「あ! 冬馬さん、こんにちは」と、桜木様がぺこっとお辞儀をした。