ケイヤク結婚
「契約成立だ」

「え?」

「冬馬さんは最後の一人にならないために。俺は出世のために。結婚しようか」

「……はい」

 私は大輝さんが書き終わるのを待ってから、ペンを受け取り、署名した。

「じゃ、帰りに区役所に出しておく。まだ仕事が残っているんだ。落ちついたら連絡するから、連絡先を教えて」

 私は携帯を出して、大輝さんとアドレスを交換した。











「……ていうことなの」

 私はつい1時間前に起きたことを、里美に説明した。

 私が住んでいるアパートまであと少し。

 家路につくまでのつもりだったけど、これは長電話になりそう。

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