ケイヤク結婚
 私も挨拶をしながらお辞儀をしていると、侑が桜木様が肩からかけている鞄をスッと持ってあげた。

「……たく。こんなに大荷物で来んなっつったろ」

「嬉しくて。つい」

 桜木様が嬉しそうに微笑んだ。

 幸せそうで羨ましいな。

「綾乃、引きとめて悪かったな。じゃあ、またな! 夏木と幸せになれよ」

 侑が桜木様の鞄の紐を肩にかけてると、私に軽く手をあげた。

「侑も。お幸せに」

「ああ。サンキュ」

 侑と桜木様が手を繋いで、駅のロータリーを歩いて行く。

 私は仲良く歩く二人の背中を見送ってから、家路についた。

 パーティの後、二人の関係が崩れてないか……不安だったけれど。良い方向に向かってるみたい。

 侑の表情が、すっきりしてた。桜木様もすごく幸せそうで。愛されてる女性の顔になってなあ。

 羨ましい。

 私もいつか。好きな人と並んで歩ける日がくるといいけど。
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