ケイヤク結婚
『綾乃……。30歳だからって焦る必要ないんだよ。必ず、綾乃にとって良い出逢いがあるんだから』

「ん、ありがと」

 私はその後、里美と他愛ない会話をしてから電話を切った。

 もうその頃には、ワンルームの自宅に戻り、ベッドに座ってくつろいでいた。

 携帯を小さいテーブルに置くと、鏡で自分の顔を見つめた。

「結婚……しちゃった」

 付き合ったこともない男性と、利害の一致から入籍をしてしまった。

 私は友達のグループの中で、独身者最後の一人になりたくなくて……結婚して。

 大輝さんは、ライバルに打ち勝って出世できるように……結婚した。

 愛を求めず、求められない結婚。

 私たちはどんな夫婦生活を送っていくのだろう。

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