ケイヤク結婚
―大輝side―
 仕事の休憩を兼ねて、妹が用意した婚姻届を区役所に提出した。

 戸籍上では、妻ができた。

 世間一般の夫婦とは違うが、これで軌道修正ができる。

 結婚せずに、どう出世をしていくか。そればかり考えて行動していたが、どうにかなりそうだ。

 一時凌ぎでしかないかもしれない。こんな行き当たりばったりな結婚生活が長続きするとは思えないが、目下の目標は達成できそうだ。

 後々、離婚することになっても致し方が無いだろう。

 冬馬さんに好きな人ができたら、ゴネずに離婚してあげよう。

 浮気をしても、俺は咎める資格はない。絶対に責めたりしない。俺以外に本気で愛する人ができたら、俺は喜んで離婚しよう。

「休日に出勤して、大変ですねえ。夏木課長」

 コトンと近所のコーヒーカフェのパッケージのカップがデスクに置かれた。

 顔をあげれば、秘書課の池内 ゆかりがスーツ姿で立っていた。

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