ケイヤク結婚
「別に。普通だが。しいて言えば、どこから見ても女性だった」

「あ……そ」

 がくっと肩を落とした竹内を見て、俺は「おやすみ」とだけ言って、ドアを閉めた。

 部屋の電気をつけると、洋服ダンスに脱いだスーツをかける。

 鏡にうつる己の顔を眺めた。

『胸がデカイとか。足が綺麗とか。顔が可愛いとか、大人びてるとか。いろいろあんだろ』

 竹内の言葉を思い出す。

 結婚するのに、相手の外見を気にする必要はあるのだろうか?

 相手からの愛も、俺からの愛も求めない結婚だ。

 彼女は見栄のため。俺は出世のため。一時凌ぎ的な契約でしかない。

 俺は携帯を手にとって、時間を確認した。

「午前3時か。連絡は夜が明けてからだな」

 俺はテーブルに携帯を置くと、襖を開けて布団を敷き始めた。
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