ケイヤク結婚
「ねえ。私と別れてからの半月で何があったのよ。まさか私、二股かけられてたの?」

「二股かけるほど、時間に余裕はない」

「じゃあ、私と別れてから何があったの? たった半月で、大輝の恋愛スタイルが変わる出来事って何?」

「一昨日言った通りだ。妻とは気が合ったから結婚した。出逢ってすぐ、互いの意見が意気投合した」

「私たちだって、身体の相性は……」

「身体だけだろ。俺はゆかりの欲求不満に付き合っただけだ。精神的な繋がりはなかった」

 俺はゆかりに背を向けて、資料室のドアノブに手をかけた。

「私とは遊びだったってこと?」

「遊ぶ時間なんて俺には無い」

「じゃあ、本気だったの? 少しは結婚を考えてくれてた?」

「有り得ない。ゆかりとは結婚はしない」

 俺に愛を求める女は嫌いだ。面倒くさい。

 同じだけの愛情を俺にも、期待して来るから。

 俺は同等の愛を返せるわけがない。だから女たちは、すぐに俺から離れて行く。

 俺は資料室を出ると、廊下を颯爽と歩きだした。

 女は嫌いだ。とくに恋愛中の女。俺に愛を欲しがる女はもっと嫌いだ。
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