ケイヤク結婚
―綾乃side―
「ごちそうさまでした」

 レストランを出た私は、大輝さんに深々とお辞儀をした。

 入籍をしてから、初めての二人きりでの食事は緊張で、何を食べたのかあまり記憶にない。

 今後について話をする予定で会ったのに、そういえば何も話してないや。

「今後の話をする前に、一つ確認しておきたいことがあるのですが」と、大輝さんがロングコートに袖を通しながら口を開いた。

「何でしょうか?」

 私は首を傾げた。

「新垣とヨリを戻す可能性はありますか?」

「え?」

 ヨリ? 戻す?

 私、大輝さんに付き合っていたなんて一言も話してないのに、どうして知っているの?

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