ケイヤク結婚

「は、初めまして。冬馬　綾乃です」

「初めまして。夏木　大輝です。妹の理沙がお世話になっているようで」

　大輝さんがぺこりと頭を下げる。

「あ、いえ。私のほうが理沙ちゃんにお世話になりっぱなしで……」

「はいはーい。自己紹介が終わったところで、これ書いてよ」

　バンと理沙ちゃんがテーブルを叩いた。

　大輝さんが「ふう」と息を吐いた。

「理沙、俺は構わないが。冬馬さんに失礼だろ」

　え？　今なんて？

『俺は構わないが』って言った？

　私は目を大きく開けると、理沙ちゃんの隣にいる大輝さんを見つめる。

　端正な顔をしている大輝さん。落ちついた雰囲気といい、女性には困ってるようには思えない。

　むしろ女性に囲まれ過ぎて困ってるような感じさえするというのに。

　構わないってどういうこと？